排水処理設備の機器管理とは?現場のメンテナンス担当者が語る日常点検の重要性

排水処理設備は、工場や施設にとって“目立たないけれど重要な存在”です。
日々の操業の裏で、環境への配慮と法令遵守を支えている縁の下の力持ちともいえます。
そんな排水処理設備が本来の性能を発揮し続けるために欠かせないのが、機器や計器の適切な日常管理です。
本記事では、現場でメンテナンスを担当しているプロの視点から、「これは知っておいてほしい!」という基本事項を、具体例を交えてご紹介します。
ポンプや撹拌機 - 小さな変化が大きなトラブルの前兆に
排水処理設備の中でも重要な役割を果たすのが、「送水用ポンプ」「薬品注入ポンプ」「撹拌機」などの機器類です。
これらの機器は、排水と薬品を混合・反応させる工程で不可欠な存在です。
しかし、長期間の使用や負荷の増大によって、性能が徐々に落ちていくことがあります。
特に以下のような小さな異変は、トラブルのサインかもしれません。
・ポンプや撹拌機から普段とは異なる音がする(例:「ガラガラ」「キーッ」など)
・通常よりも強い振動がある
・モーターの電流値が上昇している
・絶縁抵抗値が低下し、漏電のリスクが高まっている
ある工場では、撹拌機の動作音がいつもより高く感じられたため点検を行ったところ、内部の羽根にスケール(堆積物)が付着していたことが判明しました。
そのまま運転を続けていれば、モーターに大きな負荷がかかり故障に繋がっていたかもしれません。
日々の運転の中で、いつもと違うな、と感じることがあれば、それは重要なサイン。早めの点検が、機器の寿命を延ばし、トラブルを未然に防ぎます。
PH計・ORP計・流量計 - 正しく働かないと、不良水を生む原因に
排水処理では、目に見えない数値を正確に把握することがとても大切です。代表的なのがpH(酸性・アルカリ性)やORP(酸化還元電位)といった指標です。
たとえば、pHセンサーが正しく校正されていない場合、本当は酸性の排水が中性と誤って表示され、必要な薬品が投入されず、未処理の水が外部に放出されてしまう…という事態にもなりかねません。
また、流量計も非常に重要な役割を担っています。これは、排水がどれだけの量で流れているかを測定するための装置です。
意外と多いのが、送水量を増やせば処理効率が上がるだろう、という誤解です。しかし、排水処理設備には処理可能な水量の上限があります。上限を超えてしまうと、
・薬品の反応時間が足りなくなる
・薬品量が不足して適切な処理ができない
・貯槽が溢れてしまう
といった問題が発生します。
実際、ある施設では夜間の無人運転中に流量が増えすぎてしまい、朝の検査で処理水の水質が基準値を超えていることが発覚しました。原因は、流量計のトラブルにより、正しい流量が計測されていなかったことでした。
液面センサー – 見落とされがちなリスク
もう一つ、現場でよく見落とされがちなのが液面センサーの役割です。液面センサーは、原水槽やポンプピット、薬品タンクなどの「水位」を監視しています。
このセンサーがなければ、
・タンクが空になってポンプが空回りし、焼き付き故障を起こす
・タンクが満杯でも気づかず、排水が外部にあふれ出す
・薬品が不足していても自動補充がされず、処理が止まってしまう
といったトラブルが起きかねません。
精密機器である液面センサーも、使用を重ねると感度が鈍くなることがあります。
たとえば、センサーに汚れが付着して正しい反応ができず、液面が満水でも検知できない、というようなケースもあります。
こうした事態を防ぐためにも、日常的な清掃と動作確認が非常に重要です。
「普段通り」を守るための、ささやかな注意
排水処理設備は、派手さはなくても、私たちの暮らしと環境を静かに守ってくれている存在です。
そして、その安定した運転を支えているのが、皆さんの日々の点検と気づきです。
「ちょっと音が違うかも」
「数値がいつもとズレてる」
「薬品の減りが早いような…」
そんな小さな違和感を見逃さず、気になったときにはすぐに確認する。
それが結果的に大きなトラブルを防ぎ、コストや環境リスクの低減に繋がります。
水処理に関わるすべての方にとって、少しでも参考になる情報となれば幸いです。