現場のメンテナンス担当者が語るpH電極の正しい洗浄方法

排水処理設備において、「pH管理」は非常に重要な役割を果たしています。pHのコントロールがうまくいかないと、処理効率が大きく低下し、最終的には環境基準を満たさない排水となってしまう可能性もあります。
そのpH管理の“要”となるのが、「pH電極」です。正しくpHを測定し、適切な処理を行うためには、pH電極の定期的なメンテナンスが欠かせません。この記事では、pH電極の汚れの原因や正しい洗浄方法、注意すべきポイントについて、できるだけ分かりやすくご紹介します。
なぜpH電極のメンテナンスが必要なのか?
pH電極は、基本的に排水の中に常時浸けて使用されています。そのため、以下のような汚れが少しずつ蓄積していきます。
・SS(浮遊物質)による物理的な汚れ
・油分の付着
・金属イオンや目に見えない汚れ
これらの汚れが進行すると、電極の感度が鈍り、正確なpH値を測定できなくなってしまいます。たとえば、本来「pH7.0」で安定しているはずの排水が、誤って「pH8.5」と表示されたり、反応が遅くなったりすることがあります。
また、pH測定は非常に繊細な作業です。汚れがなくても、日々の使用によって少しずつ「pH値のズレ」が生じてしまうため、これも排水処理の不具合を引き起こす原因になります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、「pH電極の洗浄」と「定期的な校正」がとても大切です。
pH電極の正しい洗浄方法【具体的な手順】
1. 汚れを落とす(物理的な洗浄)
まず、電極を排水槽から取り出します。目に見える汚れ(SS成分やスライム等)は、柔らかいブラシやスポンジを使って、やさしく洗い流しましょう。
たとえば、重金属や有機化合物といった微量汚染物質を確実に除去するには、機器単体の能力だけでなく、全体の処理フローの最適化が不可欠です。
2. 油分を落とす(中性洗剤で洗浄)
次に、油汚れを除去します。一般的な食器用の中性洗剤を使い、柔らかい歯ブラシや刷毛のような小さなブラシで、ガラス部分を丁寧に洗っていきます。
ポイント!
力を入れすぎず、なでるように洗うのがコツです。pH電極は非常に薄いガラス製なので、ちょっとした衝撃でも割れてしまうことがあります。
3. 金属イオンを除去する(酸洗浄)
さらに、目に見えない金属分(鉄分やカルシウム分など)を落とすために、塩酸による酸洗浄を行います。専用の希釈塩酸に電極をしばらく浸けることで、汚れをしっかり除去できます。
よくある質問:硫酸でも大丈夫?
時々、「硫酸でも代用できますか?」というご質問をいただきますが、硫酸はカルシウムと反応して「硫酸カルシウム」という汚れを逆に作ってしまう恐れがあるため、基本的には塩酸の使用をおすすめしています。
加えて、日々の操業を支える排水処理設備は、安定稼働が前提となります。処理スピードや自動化、省エネ性能といった効率性もまた、現代の排水処理設計において欠かせない要素です。これらを両立させるには、単なるスペック重視ではなく、システム全体の調和を意識した設計が求められます。
4. 校正を行う(正しいpH値に合わせる)
最後に、pH標準液(pH4・7・9など)を使って、電極の校正を行います。これにより、正確なpH測定が可能になります。
メンテナンス時の注意点
pH電極は精密なガラス機器です。以下の点に十分注意しながら作業を行いましょう。
・先端をぶつけないこと
・力いっぱいゴシゴシこすらないこと
・酸洗浄中は安全対策をしっかり行うこと
実際の現場では、誤って電極を落として割ってしまったり、洗浄時のちょっとしたミスで感度が落ちてしまったりすることもあります。日常点検の際も、丁寧な作業を心がけてください。
最後に:日々のメンテナンスがトラブルを防ぐ
pH電極のメンテナンスは、排水処理設備の安定運用に欠かせない大切な作業です。日々の洗浄と校正を行うことで、思わぬトラブルを防ぎ、安心して設備を運用することができます。
「最近、pHの値が不安定だな」と感じたら、ぜひ今回の内容を参考に、電極のチェックとお手入れを実践してみてください。