専門知識・解説
2025.07.23

現場のメンテナンス担当者が語る定量ポンプの管理方法

現場のメンテナンス担当者が語る定量ポンプの管理方法

排水処理設備では、送水や薬品注入にさまざまなポンプが使われています。これらのポンプが正常に動作してこそ、安定した排水処理が実現できるため、ポンプの管理・メンテナンスはとても重要です。

今回はその中でも、排水処理の「良し悪し」を大きく左右する薬品注入用の定量ポンプの管理について、分かりやすくご紹介します。

定量ポンプとは? 〜ダイヤフラム式の仕組み〜

排水処理で使われる定量ポンプは、多くの場合「ダイヤフラム式」と呼ばれる仕組みを採用しています。

ポンプの「ヘッド部」と呼ばれる部分には、ダイヤフラムというゴム板のような部品が組み込まれています。このダイヤフラムがモーターによって押し引きされることで、一定量の薬品を吸い上げ、排水処理設備へ送り出します。

送液量は、ポンプのダイヤルを回すことで微調整できる仕組みになっており、これによって必要な薬品量を正確に注入することが可能になります。

なぜメンテナンスが必要なのか?

ダイヤフラムの劣化による不具合

ダイヤフラムは、ゴム製であるため、長期間使用していると徐々に硬化したり、へたりが見られるようになります。こうなると、想定していた薬品量が正しく注入できなくなってしまうことがあります。

さらに、ダイヤフラムが劣化すると、最悪の場合破損してしまい、薬品がモーター内部に侵入してしまう恐れもあります。こうなると、ポンプそのものが故障し、排水処理の運転に大きな支障をきたす可能性もあります。

具体例
実際の現場では、酸やアルカリといった強い薬品を扱うことが多く、ダイヤフラムの劣化が予想よりも早く進行するケースもあります。特に夏場は温度も高くなり、ゴム素材の劣化が加速することもあるため注意が必要です。

トラブルを防ぐための管理ポイント

定期的な薬品注入量の確認

薬品の注入量は、日々の運転記録でしっかり確認しましょう。目に見えて送液量が減っていたり、薬品濃度が安定しない場合は、ダイヤフラムが劣化しているサインかもしれません。

このような場合は、早めのダイヤフラム交換をおすすめします。メーカー推奨の交換目安も参考にしつつ、実際の設備状況に合わせた対応が重要です。

チャッキボールの役割と注意点

定量ポンプのヘッド部分には、チャッキボール(逆止弁のボール)が組み込まれています。ダイヤフラムが押し引きされるたびに、このチャッキボールが上下に動き、液が逆流しないように止水・送液をコントロールしています。

定期的な薬品注入量の確認

チャッキボールも、長く使用することで摩耗したり、ゴミや異物が詰まって止水できなくなることがあります。特に、以下のような薬品を使用している場合は、注意が必要です。

・活性炭
・消石灰(水酸化カルシウム)

これらの懸濁性のある薬品は、チャッキ部分に付着しやすく、詰まりや不具合の原因になることがよくあります。

具体例

例えば、消石灰を使用する現場では、数ヶ月に一度はチャッキ部分を分解し、ボールの摩耗具合や異物の有無をチェックしているケースが一般的です。

定量ポンプを長持ちさせるために

定量ポンプの不具合は、排水処理全体に影響を与えるだけでなく、思わぬコストやトラブルの原因にもなります。

日々のメンテナンスで意識すること

・薬品注入量をこまめに確認する
・ダイヤフラムの定期交換を行う
・チャッキボールの清掃・摩耗チェックを忘れずに

たとえば、3ヶ月に1度の定期点検を行うだけでも、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。また、設備メーカーや保守業者と連携し、早めの対応を心がけることも大切です。

まとめ

定量ポンプは、排水処理設備において薬品注入を支える大切なパートナーです。ダイヤフラムやチャッキボールといった小さな部品も、メンテナンス次第で長く安心して使うことができます。

「最近、薬品注入量が安定しないな…」と感じたら、ぜひ今回ご紹介したポイントを思い出してみてください。設備の安定運転と環境保全のため、日々の小さな管理が大きな安心につながります。