専門知識・解説
2025.08.25
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排水処理の基本〜一般的な排水系統と排水量の把握〜

排水処理の基本〜一般的な排水系統と排水量の把握〜

排水処理設備を設計・導入する際、最初に取り組むべきは「工場内のライン構成の把握」です。
どの工程でどのような排水が発生しているのかを明確にすることで、適切な処理方法や設備規模を決定できます。

一般的な排水系統

ここでは、代表的な排水系統と発生源をいくつか挙げます。

酸・アルカリ排水
めっき工程の前処理で発生する脱脂排水や酸洗排水。金属表面の油分や酸化皮膜を除去する際に生じます。

クロム排水
めっき工程から出る排水で、六価クロムを含む場合が多く、法規制も厳しいため専用の処理が必要です。

シアン排水
金・銀めっきなどで発生。毒性が非常に高く、分解処理が必須です。

無電解ニッケル排水
触媒作用によるめっき工程から出る排水で、ニッケルを含有します。

三価クロメート排水
防錆処理後に生じる排水。六価クロムより毒性は低いものの、環境基準値を守るための管理が必要です。

研摩・バレル研摩排水
金属粉や研磨剤を含む排水で、濁度や浮遊物除去が課題となります。

アルマイト排水
アルミの表面処理工程から発生。酸性排水が主です。

航空機製造排水
特殊合金や複合素材の加工工程からの排水で、成分が多岐にわたります。

プラスチックめっき排水
樹脂表面の前処理やめっき工程で発生。薬品成分が複雑です。

プリント基板排水
エッチングやめっき工程から生じ、多種類の金属イオンを含む場合があります。

塗装前処理排水
脱脂や化成処理工程からの排水です。

電着塗装排水
車体や部品塗装工程で発生し、樹脂や顔料成分が含まれます。

食品排水
油分や有機物を多く含む排水。腐敗しやすく、臭気対策も重要です。

その他特殊排水
製造業によっては、上記に当てはまらない特殊な成分を含む排水が発生します。

まずは、必要な排水系統を把握することが重要です。

排水量

排水系統が決まったら、次は排水量を決めていきます。

処理方法は排水の性質によって異なるため、必要な排水量を正確に把握することが重要です。

例えば、クロム排水の発生量が1日あたり5m³、シアン排水が2m³、一般酸アルカリ排水が20m³とわかれば、それぞれに必要な処理設備の容量や構成を設計できます。

この工程を省略すると、過大な設備投資や逆に能力不足によるトラブルを招く可能性があります。