専門知識・解説
2025.09.18
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生物処理と化学処理によるCOD・BOD・窒素・リンの除去方法

排水処理にはさまざまな方法がありますが、その中でも「生物処理」と「化学処理」は代表的な技術です。ここでは、実際の現場で用いられる具体的な事例を現場経験50年のプロフェッショナルが紹介します。
生物処理に適した排水とは?
生物処理は、微生物の働きを利用して有機物や窒素・リンを分解する方法です。
- COD ≦ BOD の排水 が適している
- 油分が多い排水は不向き → 事前に油分を除去する必要あり
つまり、微生物が「餌」として利用できる有機物が多い一方で、油分のように処理を阻害する成分が少ない排水に向いています。
生物処理の具体例
-
BOD・CODを処理するケース
- 対象排水:カチオン塗装ラインからの酢酸(極液)を含む水洗水
- 処理方法:好気性処理(酸素を利用した分解)
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窒素・リンを処理するケース
- 対象排水
- 無電解ニッケルライン → 次亜リン酸ソーダ・アンモニアを含む排水
- 酸洗工程 → 硝酸を含む排水
- 処理方法:脱窒、消化、嫌気性処理を組み合わせて対応
生物処理装置の選定
排水の濃度や水量によって規模が大きく変わるのが特徴です。
弊社では特に、「バイオコート」や単体設備を活用した方式が処理効率に優れているため採用しています。
化学処理によるCOD成分除去
一方で、排水の種類によっては化学的な処理の方が適している場合もあります。
代表的な技術
- フェントン法
過酸化水素と硫酸第一鉄を用いた酸化処理 - ブレークポイント法
次亜塩素酸ソーダを使った処理方法 - アンモニア処理
硝酸から窒素ガスまで分解
これらはいずれ排水量が少ないケースに有効です。
処理の難しさと対策
化学処理においては、ラインの稼働状況や生産量によって排水濃度が大きく変動します。
そのため、薬品添加量のコントロールが難しいのが実情です。
👉 解決策としては、貯槽をできるだけ大きくし、濃度を均一化することが推奨されます。
まとめ
- 生物処理はCOD・BODや窒素・リンの分解に有効。ただし、油分は事前除去が必要。
- 化学処理は無電解ニッケル排水などに適し、小規模排水に特に有効。
- いずれの方法でも安定運転には濃度変動の抑制(均一化)が重要。
現場では「排水の性質」と「処理量」に応じて、生物処理と化学処理を適切に使い分けることが求められます。