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2025.12.08
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地下水汚染とは?原因から防止策、発生時の処理方法までわかりやすく解説

地下水汚染とは?原因から防止策、発生時の処理方法までわかりやすく解説

工場敷地内の地下水が汚染されると、調査・対策・行政対応など多くの負担が発生し、企業の信頼性や操業にも大きな影響を与えます。
特に表面処理ラインを持つ企業では、薬品や重金属を取り扱うことから日頃の管理が欠かせません。

この記事では、地下水汚染の基礎知識から主な原因、防止策、そして実際に汚染が起きてしまった場合の処理方法まで、わかりやすく整理して解説します。

地下水汚染とは?

地下水汚染とは、地下水に人体や自然環境に有害な物質が含まれた状態を指します。

代表的な汚染物質には、重金属、油、有機溶剤、農薬、細菌などがあります。

地下水汚染が広がると、河川や湖沼に流出して生態系へ影響を与えたり、農作物へ有害物質が蓄積したり、最終的には人体への健康被害につながる可能性があります。

そのため、未然防止が最重要ですが、汚染が発生した場合は、拡大を抑える封じ込め対策と、汚染地下水および土壌の迅速な浄化が求められます。

地下水汚染の主な原因

地下水汚染が発生する主な原因は以下のとおりです。

・表面処理ラインからの漏えい
・地下タンク・配管からの漏えい
・汚染物質の不法投棄
・農業由来の化学物質
・自然由来の汚染、災害による事故

この中でも、企業活動によって起こる地下水汚染の原因で多いのは、表面処理ラインからの漏えいです。

金属材料の表面に耐食性や耐摩耗性などの機能を持たせるために行う表面処理では、六価クロムやカドミウム、シアンといった重金属がよく使用されます。代表的な表面処理はめっきです。

表面処理ラインでは、酸やアルカリが高温の過酷な環境下で使用されるため、処理槽や配管、パッキンなどが劣化しやすくなります。これらが劣化すると、有害物質が混ざった処理水が漏れて地下水汚染の原因となるため、漏えい防止対策を確実に施すことが大切です。

地下水汚染を防ぐには

地下水汚染を防ぐには、「汚さない」ことと「早期に検知する」ことの2段階が重要です。

汚さない(漏えい防止)

・有害物質の適切な保管・廃棄
・処理槽・タンク・配管の老朽化対策と定期メンテナンス
・FRP(繊維強化プラスチック)などの不浸透性床材の敷設

薬品取扱エリアの床を不浸透性にすることで、万一漏えいがあった場合でも地中への浸透を抑える効果があります。

早期に検知する(監視)

たとえ対策をしていても、地下水の定期検査は不可欠です。

水質センサーなどの監視システムを導入することで、地下水汚染をいち早く発見し被害とコストを最小化できます。

汚染された地下水の処理方法

万が一地下水汚染が発生した場合は、速やかな処理が必要です。主な処理方法は次の2つです。

物理化学処理

汚染された地下水を汲み上げ、物理的な分離と化学反応を組み合わせて汚染物質を除去・無害化する方法です。主な処理手法には以下があります。

・凝集沈澱
・膜分離
・イオン交換

特にイオン交換は、有害重金属の除去に高い効果があります。

イオン交換樹脂を充填した塔に汚染地下水を通すことで、重金属イオンを樹脂が吸着し、代わりに無害なイオンを放出します。

薬品処理

汚染水量が少ない場合や、発生源が限定されている場合には、地下水をポンプアップせず貯留し、薬品のみで処理する方法もあります。

薬品処理では、化学薬品を添加して汚染物質の性質を変化させ、無害化します。

自然由来の汚染では、薬品処理のみで完結するケースもあります。

例:
ヒ素は自然由来で地下水に溶け込みやすい物質として知られています。
ヒ素は色々な形態が存在し、いずれの化合物も水に溶けやすく、その形態に応じて除去方法を検討します。

一般的には、薬品処理のみで解決できるケースは多くなく、一般的には物理処理と組み合わせる物理化学処理が主流です。

まとめ

地下水汚染は一度発生すると、環境影響だけでなく企業へのダメージも大きく、長期にわたる対応が必要になります。
だからこそ、

✔ 日常のメンテナンスで漏えいを防ぐ
✔ 定期的な検査と監視で早期発見する
✔ 万一の際は迅速かつ適切な処理を行う

この3つを確実に実行することが重要です。

表面処理工程を持つ企業では特に、薬品漏えいリスクを理解し、予防・検知・処理を体系的に整備することで、地下水汚染のリスクを大幅に低減できます。