無排水処理システムとは?スイレイの設計思想と導入実績から学ぶ水回収リサイクルの考え方
無排水処理システムは、通常の放流型設備と比べてコストも管理負担も高くなります。それでも採用されるのは、明確な理由があります。スイレイはこれまで国内外あわせて10件以上の無排水処理プラントを納入してきました。
今回は、スイレイの設計思想と実績をもとに、無排水処理システムの考え方・導入理由・処理の仕組みをわかりやすく解説します。
なぜ無排水処理システムを選ぶのか|4つのメリット
無排水処理設備は、放流型と比べて設備コスト・ランニングコスト・メンテナンスコストのいずれも高くなります。設置面積も広く、建屋内設置が一般的で、運用に専門的な人材も必要です。それでも採用される理由は、主に以下の4つです。
1.有害物質による環境リスクの根絶
カドミウム・シアン・六価クロムなどの有害物質を扱う工場では、放流型設備でも排出基準をクリアできます。
しかし、工程内トラブルや人為的なミスによって濃厚廃液が漏出した場合、復旧対応・生産停止・近隣環境への影響という深刻な事態が生じます。無排水システムはこうしたリスクを構造的に排除します。
2.許認可取得の迅速化
放流型設備では、役所の許認可や地域住民の同意取得に時間がかかり、生産計画に影響が出るケースがあります。
無排水処理設備であれば、放流型と比べて許認可を早期に取得できる場合があります。
3.工業用水の制約への対応
新設工場が立地する工業団地で工業用水の給水量に制限がある場合、水回収リサイクルが事実上必須となります。無排水システムはこの要件を満たす有効な手段です。
4.放流先がない・下水道が使えない立地
処理水を流す河川・海域がなく自費で放流管を整備しなければならない場合、あるいは近隣の下水道管が生活排水専用で工場排水を受け入れられない場合、無排水システムが現実的な選択肢となります。
なお、すべての排水を無排水処理とするケースばかりではありません。有害物質を含む排水のみ無排水処理とし、有害物質を含まない排水は下水・河川に放流する企業もあります。また、放流量を削減する目的でRO装置やイオン交換設備を組み合わせた部分的な水回収を行う場合もあります。工場の実情に合わせた柔軟な設計が求められます。
スイレイの無排水システム:設計の進め方
スイレイでは、航空機部品の表面処理メーカーをはじめ、複数の業種で無排水処理プラントを納入してきた実績があります。最近では大手薬品メーカーからも受注を得ています。
プラント構築にあたってはまず、施工主との綿密な打ち合わせを行い、以下の項目を把握・検討することからはじめます。
生産工程で使用する薬品の種類と濃度、表面処理槽・水洗槽のサイズと段数、使用素材(アルミニウム・ステンレス・チタンなど)、1か月あたりの処理量と稼働時間・稼働日数、リサイクル水に求められる純度、そして汲出量(スイレイでは一般的に1.2〜2cc/dm²で計算)。これらの条件をもとに、排水の系統分けと処理フローを設計します。
排水系統の分け方
スイレイでは排水を「貯流水洗水」と「流水洗水」の2系統に分けて考えます。本槽からの汲出量を多く含む比較的濃度の高い排水を貯流水洗水、イオン交換処理に適した低濃度の排水を流水洗水と呼びます。
流水洗水はさらに系統別に分水し、それぞれ専用のイオン交換塔で処理します。系統を分ける理由は、イオン交換樹脂が飽和した際に特定のイオンが微量流出することがあり、それが別の水洗工程に混入すると悪影響を生じるリスクがあるためです。
スイレイでは一般的にアルカリ系・リン酸系・クロム系・シアン系・酒石酸系などに分けて管理します。

イオン交換樹脂の外部委託再生
スイレイが特にこだわるのが、イオン交換樹脂の再生方法です。スイレイでは、社内での再生は行わず、横浜にある自社再生センターへの外部委託再生を採用しています。
その理由は明確です。再生廃液は高濃度の有害物質を含むため、社内処理では作業環境が悪化し、設備スペースと専任作業者も必要になります。無排水システムとの相性も悪く、コストと安全性の両面で合理的ではありません。
スイレイでは、ユーザーごとに樹脂を単独管理・再生することで品質を保証しており、運搬には必要な許可を取得しています。
処理システムと使用機器
無排水処理システムは、複数の処理装置を組み合わせることで、排水を段階的に濃縮・分離し、最終的に水回収リサイクルを実現します。
スイレイでは各工程の役割を明確に整理したうえで機器を選定しており、それぞれの装置が連携して安定した処理を可能にしています。
・スイレイシック:MF装置へのSS負荷を下げるための沈殿・ストック槽。特殊傾斜板による省スペース・高効率な沈降分離が特徴
・MF装置:RO装置への前ろ過。ろ過精度が高く雑菌も除去可能。オゾン付紫外線装置との併用で循環水の腐敗を抑制
・RO装置:溶解性イオンを濃縮・脱塩し、透過水から水回収を行う。通常脱塩水は30μS/cm以下。さらに高純度が必要な場合はイオン交換設備を併用
・減圧濃縮装置:RO装置の濃縮水をさらに減量化。濃縮倍率8〜10倍で運用。塩濃度は最終的に100〜250g/Lまで濃縮
・晶析装置:減圧濃縮装置の濃縮水をさらに固形化・減量化。乾燥スラッジ含水率は50〜60%。ドラム回転数で調整可能
・イオン交換装置:比較的薄い排水中の溶解塩類を吸着除去し純水を生成。カチオン樹脂・アニオン樹脂と混床塔を組み合わせて使用
このように、前段でSS分を取り除き、RO装置で脱塩・水回収を行い、残った濃縮水をさらに減圧濃縮・晶析で固形化するという流れが、スイレイの無排水処理システムの基本的な骨格です。
各装置の仕様は処理対象水の性状や要求水質によって変わりますが、この多段階の処理フローによって、放流ゼロを実現します。

※上記ブロックチャートPH調整 濃縮水の量は原水の約1/100倍で想定しています。
ザイクロ排水の水回収リサイクル
ザイクロ(蛍光浸透探傷検査)は、表面加工したアルミニウムなどの素材に薬剤を塗布し、加工時の傷を検出する検査です。検査後の洗浄排水には油分・COD等の有機物が多く含まれます。
スイレイではこの排水に対し、粉末活性炭の添加によるMF前処理→RO装置→イオン交換設備という水回収リサイクルシステムを採用しています。活性炭の種類によって処理水質がほぼ決まるため、導入前に吸着テストを実施することが重要です。
スイレイでは流入量1〜2m³/h、pH6〜8、SS・油分・CODそれぞれ100〜200mg/Lという条件での納入実績があります。

青化カドミめっきラインの無排水化
カドミウムとシアンは規制濃度が非常に低く、排水処理において特に難易度が高い物質です。スイレイでは、青化カドミめっきラインに対して以下の考え方で無排水システムを構築します。
カドミ回収液は濃縮装置で濃縮・減量したうえで引取処分します。濃縮装置から生成される蒸留水はカドミめっきラインの回収槽へリサイクルするため、他の貯流水洗槽への汚染が生じません。流水洗槽はイオン交換塔で水回収リサイクルを行います。
また、カドミが混入している可能性のある酸(クロム酸含む)ラインについては、まず分析によってカドミ含有量を確認します。
カドミを含まない排水は通常の排水処理、カドミを含む貯流水洗は無排水型処理設備、カドミ濃度が比較的薄い流水洗はイオン交換塔による水リサイクルと、濃度に応じて処理方法を使い分けます。
【カドミめっきの難しさ】
治具の剥離を行っても完全にカドミを除去しきれない場合があり、クロム酸などの酸工程で残留カドミが溶解し、他のめっき工程の水洗水全体に混入するリスクがあります。また、飽和したイオン交換樹脂の再生を引き受ける業者が少なく、社内再生ではコスト・技術・環境の各面で大きな負担が生じます。スイレイでは自社再生センターがこの問題を解決します。

まとめ
無排水処理システムは、有害物質による環境リスクの排除、許認可の迅速化、水資源の制約への対応など、明確な理由があって採用される設備です。スイレイは国内外10件以上の納入実績と自社再生センターを持ち、排水系統の設計から機器選定・イオン交換樹脂の管理まで一貫して対応できる体制を整えています。無排水処理システムの導入・更新をご検討の際は、ぜひスイレイへご相談ください。