高所作業の安全|墜落・転落事故を防ぐ基本ルールと塔状設備の点検作業
建設現場における労働災害の中でも、墜落・転落事故は毎年多く発生しており、死亡災害につながる割合が高い重大災害の一つです。
足場や屋根、鉄骨、脚立、高所作業車など、高さのある場所での作業では、わずかな油断や確認不足が取り返しのつかない事故につながります。
そこで今回は、高所作業で守るべき基本ルールを整理するとともに、水処理設備に多く見られる塔状の設備における高所点検作業についてもご紹介します。日々の点検業務のなかで「いつもの作業だから」と基本を省略してしまわないよう、あらためて確認しておきたい内容です。
慣れているからこそ注意したい高所作業
墜落・転落による死亡災害は、建設業における労働災害の中でも特に多い事故の型として知られており、発生箇所としては屋根や梁、足場、はしごなどが上位を占めています。(※1)
「いつもやっている作業だから大丈夫」「少しだけだから安全帯は着けなくても問題ない」という気持ちが事故を招きます。
高所作業では、経験や技術だけでなく、基本ルールを確実に守ることが何より重要です。
一人ひとりが危険を正しく理解し、安全な作業環境を維持することが、自分自身と仲間の命を守ることにつながります。
※1参考
「墜落防止のための 安全設備設置の作業標準マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/140526-1-0.pdf
高所作業で必ず守りたいポイント
いつもやっていることだからと気を緩めず、毎回きちんと確認したいポイントです。
1.墜落制止用器具を正しく使用する
墜落制止用器具は、万が一の際に命を守る最後の手段です。作業開始前には器具に損傷がないか確認し、フックは強度のある適切な場所へ確実に掛けましょう。また、移動中も常に墜落防止措置が取られた状態を維持することが重要です。
なお、2022年1月からはフルハーネス型墜落制止用器具の使用が原則となり、高さ2メートル以上での作業においては作業床の設置が義務付けられています。作業床の設置が難しい場合には、墜落制止用器具の使用が欠かせません。
あわせて、フックを掛ける先がない現場では重大な事故につながりやすいため、あらかじめフックを掛けられる設備が確保されているかを確認しておくことも重要です。
器具を身に着けていても、掛け先がなければ本来の効果は発揮されません。作業計画の段階で、どこにフックを掛けるかまで具体的に想定しておく必要があります。
2.開口部・端部には十分注意する
床の開口部や建物の端部は、墜落事故が発生しやすい場所です。開口部にはふたや手すりを設置し、危険箇所には表示を行うなど、第三者も含めた安全対策を徹底しましょう。
統計上も、足場や開口部からの墜落・転落は発生件数の多い箇所として知られており、日常的な点検と対策の徹底が欠かせません。
3.無理な姿勢で作業をしない
「あと少しだから」と身を乗り出して作業を行うことは非常に危険です。作業位置が届かない場合は脚立や足場を移動させ、安全な姿勢で作業を行いましょう。
無理な姿勢での作業は、バランスを崩しやすいだけでなく、とっさの動作で墜落制止用器具のフックが外れてしまう可能性もあります。
脚立・はしごの使用にも注意
脚立やはしごは身近な設備ですが、使い方を誤ると重大事故につながります。
・使用前に破損やぐらつきがないか確認する
・平らで安定した場所に設置する
・天板には乗らない
・昇降時は三点支持(両手と片足、または両足と片手)を意識する
・荷物を持ったまま昇り降りしない
「少しの高さだから大丈夫」という考えは禁物です。低い場所からの転落でも、大きなけがにつながることがあります。実際、はしごや脚立からの墜落・転落による労働災害は、決して珍しいものではなく、繰り返し注意が呼びかけられている分野でもあります。
慣れた作業ほど基本を省略しがちになるため、日頃から意識して手順を守ることが大切です。
仲間同士の声掛けが事故を防ぐ
高所作業では、自分だけでなく周囲の作業員にも目を向けることが大切です。安全帯の未使用やフックの掛け忘れ、足場の異常などに気付いたら、そのままにせず声を掛け合いましょう。
人は誰でも、慣れた作業ほど「確認したつもり」になりやすいものです。本人が見落としていることに、少し離れた場所にいる仲間の方が先に気付くというケースは珍しくありません。
声を掛ける側だけでなく、掛けられる側の姿勢も同じくらい重要です。「指摘された」と身構えるのではなく、「教えてもらえてよかった」と受け止められる空気が現場にあるかどうかで、次に同じような場面が起きたときに声が上がるかどうかが変わってきます。
逆に、注意したことで気まずい雰囲気になったり、うるさがられたりする現場では、次第に誰も声を上げなくなり、小さな異常が見過ごされたまま作業が進んでしまいます。
注意し合える現場は、安全意識の高い現場です。一人の気付きが、大きな事故を防ぐことにつながります。日頃からのちょっとした声掛けの積み重ねが、いざというときに「言いやすい」現場をつくり、結果として全員の命を守ることにつながっていきます。
水処理設備の塔状設備にも、高所作業の視点が欠かせない
ここまでご紹介した高所作業の基本ルールは、建設現場に限った話ではありません。水処理設備の中には、活性炭塔やイオン交換塔のように、高さのある塔状の設備が多く存在します。
こうした設備の日常的な点検や保守作業には、高所作業の視点が欠かせません。
塔状設備の点検作業も、高所作業そのもの
塔状の設備では、劣化した活性炭やイオン交換樹脂の入れ替えのために、天板部分やマンホールへアクセスする必要があります。また、配管や計測機器の点検のために、タンクの側面に設置されたタラップを昇り降りする場面もあります。
こうした作業は、まさに今回ご紹介した高所作業の基本ルールがそのまま当てはまる場面です。墜落制止用器具を正しく使用すること、無理な姿勢で作業をしないこと、周囲の作業員と声を掛け合うことは、建設現場だけでなく、水処理設備の保守現場においても変わらず重要な原則です。
塔の高さや設置環境によっては、屋外での作業となり、風雨や日射といった条件も加わるため、足元や手すりの状態を普段以上に慎重に確認する必要があります。
設計段階からリスクを減らす工夫
設備を設計する段階においても、こうした高所作業のリスクをできるだけ減らす工夫が必要です。点検やメンテナンスのしやすさを考慮し、タラップや手すり、安全な足場を確保した設計にすることは、稼働後の作業員の安全に直結する重要な要素です。
設備が完成してから「点検口に手が届きにくい」「足場が確保できない」といった問題が判明すると、現場での対応は難しくなります。だからこそ、設計の段階で日常点検や部品交換の作業動線を具体的に想定し、安全に作業できる構造をあらかじめ組み込んでおくことが大切です。
ヒアリングや現地調査の段階で、実際に点検作業を担うメンテナンス技術者が同席し、現場目線での意見を反映できる体制を持つことも、こうした設計上の配慮を実効性のあるものにするために有効です。
付帯設備の劣化も見逃さない
また、定期的な点検を通じて、タラップの固定状況や手すりの劣化、足場の腐食といった、高所作業に直結する部分の異常を早期に発見することも欠かせません。
設備そのものの性能維持だけでなく、そこで作業する人が安全にアクセスできる状態を保つことも、長期的な安全管理の一部だといえます。
屋外に設置された塔状設備の場合、風雨にさらされることでタラップのボルトが緩んだり、手すりが腐食したりすることもあるため、設備本体だけでなく、こうした付帯設備の点検もあわせて実施することが望ましいでしょう。
まとめ
高所作業における墜落・転落事故は、重大な結果につながりやすい災害です。
墜落制止用器具の正しい使用、開口部・端部への注意、無理な姿勢を避けること、そして脚立・はしごの正しい使用方法を徹底することが、事故防止の基本です。フックの掛け先を事前に確保しておくことや、作業員同士で異常に気づいたら声を掛け合うことも、忘れてはなりません。
これは、活性炭塔やイオン交換塔といった塔状の水処理設備における点検・保守作業にも同じことがいえます。
設計段階から安全に作業できる構造を考慮し、日常点検でタラップや手すりの状態を確認しておくことが、長期的に安全な設備運用を支えます。水処理設備の導入・更新や保守体制についてお悩みの際は、高所作業の安全性にも配慮するスイレイへぜひご相談ください。