排水濃度調査からみる排水処理設備運営の現状
先日、全国鍍金工業組合連合会(全鍍連:ぜんとれん)の組合報(2026.8 No.651)を読んでいたところ、令和8年度の春期排水濃度調査結果が掲載されていました。一部の事業所で基準値超過が見られたのは、気になるところです。
日々、現場で排水処理設備と向き合っていると、こうした業界全体の調査結果は、自社の設備運営を振り返るうえでも貴重な材料になります。個々の事業所での取り組みだけでは見えてこない、業界全体としての傾向や課題が、こうした調査データから浮かび上がってくるからです。
そこで今回は、この調査結果をもとに、排水処理設備運営の現状について考えてみたいと思います。
調査結果の概要
今回の調査対象物質はほう素、ふっ素、亜鉛、六価クロムの4種類で、以下のような結果でした(組合報18ページの表より抜粋)。
| ほう素 | ふっ素 | 亜鉛 | 六価クロム | |
| 超過事業所数 | 17 | 18 | 32 | 32 |
※上記数字はアンケート提出事業所976事業所における超過事業所数です。
日々の工場運営において、排水処理設備を適正に稼働させて水質基準を満たした処理水を放流することは、非常に重要な事項です。
今回の調査結果を見る限り、各物質について多くの事業所で基準を超過している実態があり、安心・安全な事業運営が十分に行えていない事業所が少なくないことがうかがえます。
976事業所のアンケートという規模を踏まえると、超過事業所数そのものは全体の数パーセント程度にとどまるようにも見えます。
しかし、水質基準は本来「守れて当たり前」の最低ラインです。この数字が意味するのは、決して少なくない事業所が、日常的に基準超過のリスクと隣り合わせで排水処理設備を運営しているという現実です。
特に亜鉛と六価クロムでともに32事業所という結果が出ている点は、金属加工・めっき業界における排水処理の難しさを象徴しているように感じます。
亜鉛や六価クロムは、めっき工程そのものに直結する物質であるだけに、生産量や工程条件がわずかに変化するだけでも、処理設備への負荷が変わりやすいという特性があります。
数字の裏には、日々の操業条件の変化に設備がどこまで追随できているか、という現場ごとの実情が反映されていると考えられるのではないでしょうか。
六価クロムの基準値超過が持つ重み
特に六価クロムに関しては有害物質であるため、場合によっては、基準値超過によって即工場稼働停止の可能性もあります。
ほう素やふっ素、亜鉛の超過も軽視できるものではありませんが、六価クロムは人の健康への影響が大きい物質として厳しく規制されています。行政による指導や改善命令、最悪の場合は操業停止の通達にまで発展しかねない、他の物質とは一線を画すリスクを持っています。
実際に、基準値を超過した排水が公共用水域へ流出したことが判明した場合、行政からの立入調査や改善指導が入り、改善が確認されるまでの間、生産の一部制限や設備の緊急停止を求められることもあるのです。
一度でも基準値超過が発覚すれば、行政への報告や改善計画の提出、設備の緊急対応など、通常の生産活動に加えて多くの対応業務が発生します。こうした事態は、事業所の生産スケジュールや取引先との関係にも影響を及ぼしかねません。
取引先によっては、環境法令の遵守状況を取引条件の一つとして重視するケースもあり、基準値超過という事実そのものが、事業所の信用に関わる問題になり得ます。
日頃からの適正な排水処理設備の運営が、こうした事態を未然に防ぐための最も確実な手段だといえるでしょう。
東京・大阪に超過事業所が多い理由
また、この結果を都道府県別に見てみると、特に東京や大阪において基準値超過の事業所が多く見られます。両都市は工場の絶対数が特別に多いわけではない地域も含めて集計されていることを踏まえると、単純な事業所数の差だけでは、この偏りを説明しきれません。
背景を推測してみると、まず挙げられるのが都市部特有の敷地事情です。工場から出る排水は、その水量や濃度に見合った規模の処理設備を備えて処理するのが基本ですが、東京や大阪のように建物が密集した土地では、そもそも大きな設備を置くスペースを確保しづらい事業所が少なくありません。
結果として、当初から小規模な処理設備しか設置できなかったり、生産量が伸びても設備の拡張・更新が後回しになったりし、処理が追いつかず基準値超過に至っているケースがあるのではないでしょうか。
地方の工場であれば、敷地に一定の余裕があり、増産や設備更新のタイミングも比較的柔軟に見通せるでしょう。しかし都市部では、その余裕自体が最初から乏しく、その構造的な差が、こうした偏りの根っこにあるように思われます。
加えて、都市部では周辺環境への配慮や近隣住民との関係から、敷地を単純に拡張したり大規模な設備へ切り替えたりする自由度も限られています。取引先からの要求水準が上がったり生産量が増えたりして排水の負荷が徐々に高まっていっても、設備側の対応が追いつかない工場もあるでしょう。
都市部では代わりの土地を見つけること自体が、簡単ではありません。移転や建て替えという選択肢も、現実的ではないでしょう。結局は「今ある敷地・今ある設備をどう改善していくか」という方向で対応せざるを得ない事業所が多いのではないかと考えます。
現状のまま処理水を流し続けるリスク
その都度、各事業所様も対策を投じておられると思いますが、現状のまま処理水を流し続けることは、環境汚染や人・生物の健康被害につながるため、いずれは生産活動の停止を通達される危険性が非常に高くなってくると思われます。
目先の生産を優先して設備の見直しを後回しにしてしまうと、結果的に事業継続そのものが脅かされる事態に陥りかねません。
日々の生産に追われる中では、排水処理設備への投資判断はどうしても後回しになりやすいものです。しかし、基準値超過が常態化した状態を放置することは、いわば「時間の問題」でリスクが表面化するのを待っているに等しい状態だといえます。
排水処理設備は、一度導入すれば長く使い続けるものですが、生産体制や取扱う物質、排水量は時間の経過とともに変化していきます。導入時には十分だった処理能力も、数年後には状況に見合わなくなっていることがあります。
だからこそ、定期的に自社の排水処理設備の処理能力と、実際の排水の水量・濃度を照らし合わせて確認する機会を持つことが重要です。今回のような業界団体の調査結果は、自社の状況を客観的に見直すきっかけとしても活用できるのではないでしょうか。
省スペースでの排水処理改良なら、スイレイへ
弊社は、そのような省スペースでの排水処理における改良を最も得意としています。限られた敷地の中でも、既存の設備を活かしながら処理能力を高める工夫や、コンパクトながら十分な処理性能を確保できる設備へのリニューアルなど、都市部特有の制約を踏まえた解決策をご提案してまいりました。
新たに広い土地を確保することが難しい事業所様であっても、既存の配置や配管を活かしながら段階的に処理能力を引き上げていく方法など、現場の状況にあわせた選択肢は複数存在します。
土地の確保が難しい、既存設備の更新に踏み出せていない、といったお悩みをお持ちの事業所様は、決して少なくありません。省スペースでの排水処理設備の改良や、基準値超過のリスクを抱えたままの運営についてお悩みの際は、ぜひスイレイへご相談ください。