内部腐食とは?見えない場所で進む水処理設備の劣化と予防保全の重要性
工場の排水処理を担う水処理設備は、毎日休まず動き続けています。外から見て異常がなければ、つい「まだ大丈夫」と考えてしまいがちです。ところが、金属の劣化は目の届かない内側で静かに進んでいることがあります。それが「内部腐食」です。
今回は、内部腐食が起こるしくみを整理したうえで、実際に内部で起きた腐食の事例を紹介します。放置した場合のリスクや、事後保全と予防保全の違い、内部腐食を防ぐための保全のポイントもあわせて解説します。
内部腐食とは?外から見えない場所で進む金属の劣化
内部腐食とは、設備や構造物の内側、つまり外から直接見えない部分で進む腐食のことです。
・配管の内面
・タンクや槽の内壁
・水中に沈んでいる部材
などが代表的な場所です。
外装の塗装がきれいに保たれていても、内側では錆が広がり、金属が薄くなっていることがあります。気づいたときには穴があいていた、部材が折れていた、というケースも少なくありません。
内部腐食がやっかいなのは、目に見える変化が出たときには、すでにかなり進行していることが多い点です。
腐食が起こるしくみ
鉄などの金属は、水と酸素にふれると化学反応を起こし、錆(酸化物)に変わっていきます。金属の表面で、電子を放出する部分と受け取る部分が生まれ、小さな電池のような状態になることで腐食が進むと考えられています。
この反応は、水分が多いほど、また水に塩分や酸・アルカリなどの成分が含まれているほど進みやすくなります。常に水と接している水処理設備は、腐食にとって条件がそろいやすい環境だといえるでしょう。
全面腐食と局部腐食
腐食は大きく「全面腐食」と「局部腐食」に分けられます。
全面腐食は、金属の表面がほぼ均一に薄くなっていくタイプです。進み方が比較的予測しやすく、肉厚の測定などで状態を把握しやすいのが特徴です。
一方の局部腐食は、特定の場所に集中して深く進むタイプです。
・小さな穴が深く掘られていく孔食
・部材のすき間で起こるすき間腐食
・種類の違う金属が接している部分で起こる異種金属接触腐食
などがあります。
表面の一部だけが急に進むため、外から見て気づきにくく、思わぬタイミングで穴あきや破断につながることがあります。
水処理設備で内部腐食が起こりやすい理由
水処理設備で内部腐食が起こりやすい理由として、次のような点が挙げられます。
・槽や配管が長時間、水や汚泥に浸かっている
・排水に含まれる成分や、処理に使う薬品の影響を受ける
・沈んだ汚泥の下など、酸素の届き方にムラができる場所がある
・槽の内部は運転中に目視しにくく、点検の機会が限られる
特に、運転を止めて水を抜かなければ見えない部分は、劣化の発見が遅れやすくなります。内部腐食は、水処理設備の「見えないリスク」の代表といえるでしょう。
実例:汚泥濃縮槽の内部で進んだ配管・壁部の腐食
ここからは、水処理設備の槽の内部で腐食が進んだ例を写真で紹介します。

【画像1:槽の上部から見た内部。槽内を横切る配管が錆に覆われている】
槽の上部からのぞくと、汚泥の水面の上を横切る配管が、赤茶色の錆で覆われています。表面の塗膜がはがれ、金属そのものが腐食している状態です。

【画像2:槽内部の配管と壁部。配管の表面がはがれ、壁面にも錆が広がっている】
さらに内部をのぞくと、配管の表面は層状にはがれ、ところどころが大きく欠けています。槽の壁にも錆が広がっているのがわかります。いずれも、ふだんの運転中には目にふれにくい場所です。
このように内部の配管や壁部の腐食が進行すると、やがて破損につながります。破損した箇所から、本来は分けられているはずの水が混ざり合い、処理水が汚染されるおそれが出てきます。
内部腐食を放置すると起こるリスク
内部腐食を「まだ動いているから」と放置した場合、どのような事態が起こりうるのでしょうか。主なリスクを3つ紹介します。
1.放流水の水質悪化と法令違反のおそれ
配管や壁部が破損すると、処理水側に未処理の排水が流れ込んでしまうことがあります。そうなると放流水の水質が悪化し、正常な処理が行えなくなります。
工場などから公共用水域へ排出する水には、水質汚濁防止法などにもとづく排水基準が定められています。基準を満たせない状態が続けば、法令違反として罰則の対象になる可能性もあります。
2.排水設備が止まり、生産活動も止まる
水処理設備は、工場の生産活動を下支えする設備です。排水を適切に処理できなくなれば、排水設備を止めざるをえなくなり、それにともなって生産ラインの停止に追い込まれることもあります。
設備の故障そのものよりも、生産が止まることによる損失のほうが大きくなるケースも珍しくありません。
3.緊急対応で費用がかさむ
故障が起きてからの対応は、どうしても「緊急対応」になります。
急ぎの修理手配に加え、槽内の水や汚泥をバキュームカーで抜き取る対応などが必要になれば、計画的に整備する場合と比べて余分な費用が発生します。
予防保全とは?事後保全との違い
内部腐食のリスクを減らすうえで欠かせない考え方が「予防保全」です。ここでは、事後保全との違いを整理します。
事後保全と予防保全の違い
事後保全とは、設備が故障したり性能が落ちたりしてから修理を行う保全方法です。故障するまで部品を使い切れるという面はありますが、いつ止まるかわからないため、突発的な停止や緊急対応のリスクをかかえることになります。
予防保全とは、故障が起こる前に点検や部品交換、補修を行い、故障を未然に防ぐ保全方法です。あらかじめ決めた周期で行う時間基準保全(TBM)や、設備の状態を見ながら行う状態基準保全(CBM)などの方法があります。
状態の変化から故障の予兆をとらえる予知保全も、予防保全の考え方のひとつです。
内部腐食のように、外から見えないところで進む劣化に対しては、壊れてから直す事後保全では対応が後手に回りがちです。計画的に点検し、早めに手を打つ予防保全が向いています。
修理費は予防保全の3〜5倍になることも
スイレイでは、予防保全を怠って設備が故障した場合、修理に保全の3〜5倍の費用がかかると考えています。さらに、排水設備が止まれば生産活動も止まり、水質基準を満たせなければ罰則が科せられるおそれもあります。
目先の保全コストを抑えたつもりが、結果的に大きな出費や信用の低下につながってしまう。これが事後保全に頼りきることの怖さです。
内部腐食を防ぐ予防保全のポイント
では、水処理設備の内部腐食を防ぐには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
定期点検で内部の状態を確認する
内部腐食は外から見えないため、定期点検で内部の状態を確認する機会をつくることが大切です。槽の水を抜いて内部を目視したり、配管や壁部の肉厚を測定したりすることで、腐食の進み具合を把握できます。
点検の結果を記録として残しておけば、劣化のスピードがわかり、次の補修時期の判断にも役立ちます。
計画保全で設備の長寿命化をはかる
点検で腐食が見つかった場合は、穴があく前に補修や部品交換、塗装のやり直しなどを計画的に行います。設備の老朽化が進む前に手を入れることで、設備の長寿命化につながります。
ライフサイクルコストで考える
設備にかかる費用は、導入時の費用だけでなく、運転・保守・修理・更新まで含めたライフサイクルコストで考えることが大切です。
予防保全には一定の費用がかかりますが、突発的な故障や生産停止による損失を防ぐことで、長い目で見たトータルコストを抑えることにつながります。
メーカーの知見を活かした設備管理
内部の腐食が進みやすい場所や、交換が必要になる部材の目安は、設備の構造を熟知したメーカーだからこそわかる部分もあります。日々の設備管理は自社で行いつつ、定期的な点検や保全計画づくりは専門家に相談するのも有効な方法です。
水処理設備の予防保全はスイレイにご相談ください
スイレイは、水処理設備の設計から製作、メンテナンスまでを手がけるメーカーです。「スイレイシック」をはじめ、自社製品の構造を熟知した立場から、設備の安定稼働に向けた予防保全のご提案を行っています。
「長年使っている槽の内部が気になる」「故障する前に点検しておきたい」といったご相談にも対応し、予防保全に必要なお見積りをご提出いたします。
スイレイシックの詳細はこちら https://www.suirei.co.jp/water/thick.php
メンテナンスについてはこちら https://www.suirei.co.jp/maintenance/
まとめ
内部腐食は、設備の内側で目に見えないまま進む劣化です。常に水や汚泥にふれている水処理設備では、配管や壁部の腐食が気づかないうちに進み、破損によって処理水が汚染されるおそれがあります。
放置すれば、放流水の水質悪化や法令違反、生産停止、緊急対応による費用の増加といった深刻な事態につながりかねません。壊れてから直す事後保全ではなく、故障する前に手を打つ予防保全で、最悪の事態を回避することが大切です。
水処理設備の内部の状態が気になる方は、ぜひ一度スイレイにご相談ください。