缶体腐食とは?水処理設備の老朽化が招く水漏れリスクと長寿命化のための予防保全
水処理設備のなかでも、水や汚泥をためる槽そのものの本体部分を「缶体」と呼びます。缶体は設備の器にあたる部分で、ふだんは頑丈で壊れないものと思われがちです。しかし、長年使い続けるうちに老朽化が進み、腐食によって穴があいてしまうことがあります。
今回は、缶体腐食が起こる原因と、水処理設備の槽で実際に起こりうる缶体腐食の例を紹介します。あわせて、缶体腐食を放置したときのリスクや、設備の長寿命化につなげる予防保全のポイントを解説します。
缶体腐食とは?水処理設備の「器」が傷むトラブル
缶体腐食とは、タンクや槽の本体を構成する鋼板が、錆によって薄くなったり穴があいたりする現象です。缶体は、内側では常に水や汚泥にふれ、外側では雨や湿気にさらされています。内と外の両方から劣化の影響を受けやすい部位だといえます。
缶体の腐食は、配管や部品の劣化と比べて、交換や補修の規模が大きくなりやすいのが特徴です。部品であれば取り替えれば済みますが、缶体に穴があけば、槽を空にしたうえでの補修や、場合によっては設備そのものの新しくしなければならないでしょう。
缶体腐食が起こる主な原因
缶体の腐食は、ひとつの原因だけで起こるとは限りません。主に次のような要因が重なって進行します。
・経年劣化による塗膜や防食被覆の傷み
・排水に含まれる成分や、水処理に使う薬品の影響
・槽の底部や溶接部など、水や汚泥がたまりやすい場所の局所的な腐食
・外面に付着した水分や、ボルト周りから入り込む雨水
特に、塗膜が傷んで鋼板がむき出しになると、そこから腐食が一気に広がることがあります。表面の小さな錆を見過ごしているうちに、内部まで深く進んでしまうケースもあります。
老朽化した水処理設備ほど注意が必要
設置から年数がたった水処理設備では、目に見えない部分で鋼板の厚みが少しずつ失われています。毎日問題なく動いていても、缶体の強度は確実に落ちているかもしれません。
老朽化は避けられないものですが、劣化のスピードは日々の保全で大きく変わります。だからこそ、年数のたった設備ほど、定期的に状態を確認することが大切です。
缶体腐食の実例:槽の外面と内壁に現れた腐食
ここからは、水処理設備の槽で缶体腐食が進んだ例を写真で紹介します。

【画像1:槽の外面下部。点検口のボルト周りから錆汁が流れ、底部の外周は錆で覆われている】
槽の外側を見ると、点検口のボルト周りから赤茶色の錆汁が筋のように流れています。さらに槽の底部の外周は錆で覆われ、足元には剥がれ落ちた錆の破片が散らばっています。外から見てもわかるほど、缶体の下部で腐食が進んでいる状態です。

【画像2:槽の内壁。腐食した鋼板の一部に穴があいている】
槽の内側では、鋼板の表面が錆とスケールに覆われ、その一部に穴があいていました。経年的な劣化や薬品などの影響で缶体の腐食が進行し、ついに貫通してしまったものです。
このように缶体に穴があくと、内部の水が外へ漏れ出してしまいます。
缶体腐食を放置すると起こるリスク
缶体の小さな錆を「まだ使えるから」と放置した場合、どのような事態が起こりうるのでしょうか。主なリスクを3つ紹介します。
1.水漏れによる漏洩被害と環境汚染
缶体に穴があくと、槽の中の水や汚泥が外へ漏れ出します。漏れた水が敷地の外へ流れ出せば、近隣に迷惑をかけるおそれがあります。
また、漏れた水が地面にしみ込めば、地下浸透による土壌や地下水の汚染につながる可能性もあります。水質汚濁防止法では、有害物質を含む水の地下への浸透についても規制が設けられています。漏洩は、企業としての環境への責任や信用にも関わる問題です。
2.排水設備が止まり、工場の稼働も止まる
缶体から水が漏れる状態では、正常な処理を続けることができません。排水設備を停止せざるをえなくなり、それにともなって工場の稼働停止に追い込まれるおそれがあります。
処理が滞った状態で排水を続ければ、水質異常を招くことにもなりかねません。最悪の場合、排水基準を満たせず罰則が科せられる可能性もあります。
緊急補修とバキューム対応で費用がかさむ
穴があいてからの対応は、どうしても緊急補修になります。
漏水を止めるための応急処置に加え、槽の中の水や汚泥をバキュームカーで抜き取る対応が必要になれば、余分な費用が発生します。計画的に補修する場合と比べて、コストが大きく膨らみやすいのです。
老朽化と向き合う予防保全の考え方
缶体腐食のように、時間をかけて進む劣化に対しては、壊れてから直す事後保全ではなく、故障する前に手を打つ予防保全が欠かせません。
予防保全とは、点検や補修、部品交換などを計画的に行い、故障を未然に防ぐ保全方法です。缶体の場合、穴があく前に腐食の進み具合を把握し、適切な時期に補修することで、設備を長く安全に使い続けることができます。
スイレイでは、予防保全を怠って設備が故障した場合、修理に保全の3〜5倍の費用がかかると考えています。さらに、排水設備が止まれば生産活動も止まり、水質基準を満たせなければ罰則が科せられるおそれもあります。老朽化した設備ほど、予防保全によって最悪の事態を回避することが重要です。
水処理設備の長寿命化につなげる予防保全のポイント
缶体腐食を防ぎ、水処理設備の長寿命化をはかるには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
外面の錆や錆汁を見逃さない
缶体の外面に出る錆や錆汁は、腐食が進んでいるサインです。特に、ボルト周りや溶接部、槽の底部の外周などは、錆が出やすい場所です。日常の巡回のなかで、外面の変化に目を配る習慣をつけておきましょう。
定期点検で内面と板厚を確認する
缶体の腐食は、内側から進んでいることも少なくありません。定期点検の際に槽を空にして内面を確認したり、鋼板の厚みを測定したりすることで、腐食の進み具合を数値で把握できます。
点検結果を記録しておけば、劣化のスピードがわかり、補修時期の判断に役立ちます。
塗装や防食処理を計画的に行う
塗膜の劣化は、缶体腐食の入り口になります。塗膜が傷んできたら、腐食が深く進む前に塗り替えや防食処理を行うことが大切です。早めに手を入れるほど、補修の規模も費用も小さく抑えられます。
補修か更新かをライフサイクルコストで判断する
腐食が広い範囲に及んでいる場合は、部分的な補修を続けるか、設備を更新するかの判断が必要になります。このときは、目先の費用だけでなく、今後の補修費や運転コストまで含めたライフサイクルコストで比較することが大切です。
設備の構造を熟知したメーカーに相談すれば、状態に合った判断がしやすくなります。
水処理設備の予防保全はスイレイにご相談ください
スイレイは、水処理設備の設計から製作、メンテナンスまでを手がけるメーカーです。汚泥濃縮装置「スイレイシック」をはじめ、自社製品の構造を熟知した立場から、設備の安定稼働に向けた予防保全のご提案を行っています。
「長年使っている槽の錆が気になる」「穴があく前に状態を確認しておきたい」といったご相談にも対応し、予防保全に必要なお見積りをご提出いたします。
スイレイシックの詳細はこちら https://www.suirei.co.jp/water/thick.php
メンテナンスについてはこちら https://www.suirei.co.jp/maintenance/
まとめ
缶体腐食は、水処理設備の器である槽の本体が、錆によって薄くなったり穴があいたりするトラブルです。経年劣化や薬品などの影響で少しずつ進み、老朽化した設備ほど注意が必要です。
缶体に穴があけば、水漏れによる近隣への被害や地下浸透による環境汚染、排水設備の停止にともなう工場の稼働停止、緊急補修による費用の増加といった深刻な事態につながりかねません。外面の錆を見逃さず、定期点検と計画的な補修で、設備の長寿命化をはかることが大切です。
槽の錆や老朽化が気になる方は、ぜひ一度スイレイにご相談ください。