汚泥のため過ぎが招く設備トラブルとは? 引き抜き不足のリスクと予防保全
工場の水処理設備で排水処理を続けていれば、汚泥は毎日少しずつ生まれます。たまること自体は当たり前なので、「まだ余裕がある」「今週は忙しいから来週に」と、引き抜きが後回しにされやすい作業でもあります。
ところが、汚泥のため過ぎは放流水の水質を悪くするだけでなく、水処理設備の中で動く機器を壊す原因にもなりかねません。気づいたときには、修理と緊急対応で大きな出費につながっていた、ということも珍しくありません。
そこで今回は、汚泥のため過ぎによって起こるトラブルと、それを防ぐための予防保全のポイントをご紹介します。
汚泥がたまる仕組みと「ため過ぎ」の状態
まずは、汚泥が槽の中でどのように生まれ、どのように取り除かれているのか、その流れを見ていきましょう。
沈殿槽・濃縮槽で汚泥が生まれる流れ
排水処理で出る汚泥(スラッジ)とは、水から取り除かれた汚れのかたまりです。
・排水に含まれる固形物
・薬品で集めた汚れ
・生物処理で増えた微生物
などが、槽の底に沈んで汚泥になります。
生物処理で増えすぎた微生物のかたまりは「余剰汚泥」と呼ばれ、これも定期的に取り除かなければなりません。
沈殿槽や汚泥濃縮槽(シックナー)では、底に沈んだ汚泥をレーキ(スクレーパー、汚泥掻寄機)がゆっくり回転しながら中央へかき寄せます。
集められた汚泥は、排泥ポンプで槽の外へ引き抜かれる仕組みです。レーキを回しているのは、モーターの回転を遅く力強い動きに変える減速機です。
台所のシンクにたとえると、わかりやすいかもしれません。排水口のゴミ受けは、こまめに捨てていれば問題なく水が流れます。
しかし放っておくと、ゴミがあふれて流れが悪くなり、においや詰まりにもつながりますが、それと同じです。槽の汚泥も同じで、たまる量に見合った引き抜きが欠かせません。
引き抜きが遅れる主な理由
汚泥のため過ぎは、主に以下のような理由で起こります。
・汚泥の量は槽の中にあり、外から見えにくい
・毎日少しずつ増えるため、変化に気づきにくい
・引き抜きや汚泥処分の手間・費用を抑えたい気持ちが働く
・担当者の異動などで、引き抜きの周期が引き継がれていない
・生産量が増えて汚泥の発生量が変わったのに、引き抜きの頻度が以前のまま
特に最後のケースは見落とされやすいところです。
工場の生産量や排水の性質が変われば、汚泥の量も変わります。引き抜きの周期は、一度決めたら変わらないものではなく、必要に応じて見直しが必要なのです。
汚泥のため過ぎの実例

槽の水面近くまで汚泥がたまった状態
写真は、槽の中に汚泥がたまり過ぎた状態の例です。本来は底に沈んでいるはずの茶色い汚泥のかたまりが、嫌気性発酵した状態で水面のすぐ近くまでびっしりと上がってきています。
ここまでくると、上澄みの水を確保できる層はほとんど残っていません。汚泥が処理水側へ流れ出すのは、時間の問題といえる状態です。
ため過ぎで起こるトラブル①:水質の悪化
汚泥のため過ぎで最初に表れやすいのが、処理水の水質の悪化です。どのような仕組みで水質が悪くなり、工場にどんな影響が出るのかを解説します。
処理水側へ汚泥が流れ出す
槽の底にたまった汚泥が増えると、汚泥と上澄み水の境目(汚泥界面)がだんだん上がってきます。
槽の中で水がきれいになるための空間が狭くなり、汚泥が沈みきらないうちに水が出口へ向かってしまいます。
その結果、汚泥が処理水と一緒に流れ出す「キャリーオーバー」が起こります。また、底に長くとどまった汚泥は酸素が足りない状態になり、油が含まれる汚泥は嫌気性発酵が進み汚泥内でメタンなどのガスが発生して汚泥が浮き上がることもあります。
排水基準を超えて生産が止まるおそれ
処理水側に汚泥が流れれば、放流水の水質は悪化します。排水基準を超えた状態が続けば、排水を止めざるをえなくなり、生産停止につながるおそれがあるのです。
最悪の場合、法令違反として罰則が科せられる可能性もあります。
ため過ぎで起こるトラブル②:機器の故障
汚泥のため過ぎで見落とされやすいのが、機器への影響です。水質の問題は表に出やすい一方、機器への負担は静かに積み重なっていきます。
固まった汚泥がレーキに負担をかける
引き抜かれずに残った汚泥は、自分の重さで押し固められ、だんだん硬く締まっていきます。底にたまった汚泥が固着すると、その中を回るレーキには、ふだんよりはるかに大きな力がかかります。

大きな負担がかかって破損したレーキの軸
写真は、負担に耐えきれずに破損したレーキの軸の例です。
先端が折れ、断面には錆が広がっています。ぬかるみに長くはまった車を無理に動かそうとすれば、タイヤや車軸を傷めてしまうでしょう。レーキにも、それと同じことが起きているのです。
減速機・排泥ポンプの故障へ連鎖する
負担がかかるのはレーキだけではありません。レーキを回す減速機にも、無理な力が加わり続けます。また、固まった汚泥は排泥ポンプで吸い出しにくく、ポンプや配管の詰まり、故障を招きます。
ひとつの機器が止まれば、汚泥はさらにたまり、別の機器にも負担がかかります。汚泥のため過ぎは、こうした故障の連鎖を生みやすいのが怖いところです。
部品1つの交換で済んだはずの不具合が、複数の機器の修理に広がれば、修理費用もそれだけふくらんでしまいます。
緊急対応とバキュームで余分な費用がかかる
レーキやポンプが止まってしまうと、槽の中の汚泥を通常の方法で引き抜けません。
バキュームカーで汚泥を抜き取る緊急対応が必要になることもあり、さらい急ぎの手配による費用がかかってしまうでしょう。
計画的に引き抜いていれば、かからなかったはずの出費です。
汚泥のため過ぎを防ぐ定期点検と設備管理のポイント
汚泥のため過ぎは、水処理設備の日々の設備管理で防げるトラブルです。今日から取り組める具体的なポイントをご紹介します。
引き抜きの周期と量を決めて記録する
まず、汚泥を「いつ」「どれだけ」引き抜くかを決め、実施した日時と量を記録しましょう。記録が残っていれば、担当者が変わっても同じ管理を続けられます。
生産量が増えた時期や季節による変化も、記録から読み取れます。
汚泥界面の高さを定期的に測る
汚泥がどこまでたまっているかは、汚泥界面の高さで確認します。界面計を使う方法のほか、透明な採水器で槽の水を深さごとに採り、汚泥の層がどこから始まるかを見る方法もあります。
測った高さを記録し、「この高さを超えたら引き抜く」という目安を決めておくと、判断に迷わないでしょう。
機器の小さな変化に気づく
減速機やポンプの異変は、汚泥のため過ぎを知らせるサインでもあります。
いつもと違う音や振動がないか、モーターの電流値が上がっていないかを、日常の巡回で確認しましょう。
点検で確認したい主な項目を表にまとめました。
| 点検する場所 | 確認すること | 気になったときの対応 |
| 槽の水面 | 汚泥が浮いていないか、処理水が濁っていないか | 引き抜きの頻度を見直す |
| 汚泥界面 | 界面の高さが目安を超えていないか | 早めに汚泥を引き抜く |
| 減速機 | 異音・振動・油漏れがないか | 運転状況を記録し、メーカーに相談する |
| モーター | 電流値がふだんより上がっていないか | 汚泥の固着を疑い、点検を依頼する |
| 排泥ポンプ・配管 | 吸い込みが悪くなっていないか、詰まりがないか | 配管の清掃やポンプの点検を行う |
槽を空にした定期点検でレーキの状態を確認する
レーキや槽の底は、運転中には見えません。年に一度など周期を決めて槽を空にし、レーキの曲がりや腐食、汚泥の固着がないかを確認しておくと安心です。
汚泥のため過ぎを防ぐ「予防保全」の考え方
予防保全とは、故障が起きる前に点検や部品交換、補修を計画的に行い、トラブルを未然に防ぐ保全の方法です。故障してから直す「事後保全」とは、考え方が大きく異なります。
水処理設備における汚泥のため過ぎのトラブルは、まさに予防保全で防げるものです。引き抜きと点検を計画的に続けていれば、レーキの破損や減速機・ポンプの故障といった大きなトラブルを避けられます。
スイレイでは、予防保全を怠って設備が故障した場合、修理に保全の3〜5倍の費用がかかると考えています。さらに、排水設備が止まれば生産活動も止まり、水質基準を満たせなければ罰則が科せられるおそれもあります。目先の手間や費用を惜しんだ結果、大きな損失を招いては元も子もありません。
水処理設備の予防保全はスイレイにご相談ください
スイレイは、水処理設備の設計から製作、メンテナンスまでを一貫して手がけるメーカーです。固液分離装置「スイレイシック」をはじめ、自社で設計・製作した設備の構造を熟知した立場から、設備の安定稼働に向けた予防保全をご提案しています。
・引き抜きの周期が適切かわからない
・減速機の音が気になる
・しばらく槽の中を点検していない
といったご相談にも対応し、予防保全に必要なお見積りをご提出いたします。
導入後のメンテナンスまで伴走しますので、気になることがあれば早めにお声がけください。
まとめ
汚泥のため過ぎは、引き抜きの後回しから始まる、身近で見落とされやすいトラブルです。
放置すれば、処理水側への汚泥の流出による水質の悪化や生産停止を招きます。さらに、固まった汚泥がレーキや減速機、排泥ポンプに負担をかけ、故障の連鎖と修理費用の増加につながります。
引き抜きの周期と量を記録し、汚泥界面の高さや機器の変化を定期的に確認すること。そして、故障する前に手を打つ予防保全を続けることが、水処理設備を安定して動かし続けるいちばんの近道です。
設備の点検や保全計画にお悩みの際は、ぜひスイレイにご相談ください。