減速機の故障を防ぐには?水処理設備を止めないための点検と予防保全
沈殿槽や汚泥濃縮槽の上には、モーターと一体になった減速機が据え付けられています。雨の日も風の日も、24時間休まず動き続ける、まさに縁の下の力持ちです。
ふだんは静かに回っているため、調子が悪くなっていても気づきにくいのが減速機の怖いところでしょう。ある日突然止まってしまえば、汚泥をかき寄せられなくなり、水質の悪化や他の機器の故障へとつながっていきます。
そこで今回は、減速機の不具合が起こる原因と、止まったときに起こるトラブル、そして故障の前ぶれをつかむ「予知保全」の考え方もあわせてご紹介します。
減速機とは?水処理設備での役割
減速機の不具合について考える前に、まずは減速機がどのような装置で、水処理設備の中でどんな役割を担っているのかを確認しておきましょう。
モーターの回転をゆっくり力強い動きに変える装置
減速機とは、ひとことでいうと、モーターの速い回転を、ゆっくりとした力強い回転に変える装置です。内部には大小の歯車が組み合わされており、回転の速さを落とす代わりに、回す力(トルク)を大きくしています。
自転車のギアを思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。坂道で軽いギアに切り替えると、ペダルを何回もこいでも進みはゆっくりですが、そのぶん小さな力で坂を登れます。
減速機も同じように、速さを力に変えているのです。
汚泥掻寄機(レーキ)を動かす心臓部
沈殿槽や汚泥濃縮槽(シックナー)では、槽の底に沈んだ汚泥を、レーキ(スクレーパー、汚泥掻寄機)がゆっくり回りながら中央へ集めています。このレーキを回しているのが減速機です。
底にたまった汚泥は重く、レーキには大きな抵抗がかかります。しかも汚泥の沈殿を乱さないよう、レーキはゆっくり動かさなければなりません。
「ゆっくり」と「力強く」を両立させる減速機は、汚泥処理の流れを支える心臓部といえる存在です。
減速機が故障する主な4つの原因
減速機の故障は、ある日突然起こるように見えて、実際には少しずつ進んでいることがほとんどです。その主な原因を4つ見ていきましょう。
1.潤滑油の不足・劣化
減速機の内部では、歯車やベアリング(軸受)が回っています。ここに必要な潤滑油が減ったり、長く使って劣化したりすると、金属どうしの摩擦が大きくなり、部品の摩耗が一気に進みます。
油の量や汚れを確認し、決められた周期で交換することが、減速機を長持ちさせる基本といえます。
2.ベアリングや歯車の摩耗
24時間回り続ける減速機では、ベアリングや歯車が少しずつすり減っていきます。摩耗が進むと、歯車のかみ合わせが悪くなったり、軸にガタつきが出たりして、異音や振動が出始めます。
3.汚泥の固着などによる過負荷
水処理設備ならではの原因として、汚泥による過負荷があります。汚泥の引き抜きが遅れて槽の底で固まると、レーキを回すために、ふだんよりはるかに大きな力が必要となります。
その負担は、レーキを回している減速機にもそのままかかります。無理な力がかかり続ければ、歯車や軸が傷み、最悪の場合は破断してしまいます。
4.屋外の雨・湿気による腐食
槽の上に設置された減速機は、雨や湿気、日差しにさらされています。
ボルトやつなぎ目から錆が広がったり、オイルシール(油が漏れないようにする部品)が劣化して雨水が入り込んだりすると、内部の部品まで傷めてしまいます。
減速機の不具合の実例
ここでは、水処理設備で起こりうる減速機の不具合の例を、写真で紹介します。

槽の上に設置された減速機とモーター
写真は、槽の上に据え付けられた減速機とモーターです。本体のつなぎ目やボルトのまわりには、錆が出ているのがわかります。外から見える部分が傷んでいる場合、雨水や湿気の影響が内部にまで及んでいないか、注意して確認したいところです。

無理な力がかかって破断した軸
写真は、ねじれるようにして折れてしまった軸の断面です。汚泥の固着などで大きな負担がかかり続けた結果、軸が回す力に耐えきれずに破断してしまいました。ここまで進んでしまうと、修理には部品の交換が欠かせません。
減速機が止まると起こるトラブル
減速機の故障は、減速機だけの問題では終わりません。止まったときに何が起こるのかを、順を追って見ていきます。
汚泥をかき寄せられず、処理水側へ流れ出す
減速機が故障すると、レーキが止まり、汚泥をかき寄せられません。槽の底には汚泥がたまる一方で、汚泥と上澄み水の境目がだんだん上がってきます。
やがて汚泥は処理水側へ流れ出し、放流水の水質が悪化します。排水基準を超えれば排水を止めざるをえず、生産停止につながるおそれもあるでしょう。
最悪の場合、法令違反として罰則が科せられる可能性も否定できません。
汚泥が固着して排泥ポンプや配管が詰まる
かき寄せられずに残った汚泥は、時間とともに固まっていきます。固まった汚泥は排泥ポンプで送りにくく、配管が詰まる原因です。
レーキやポンプの破損で修理費がふくらむ
固着した汚泥は、レーキや排泥ポンプにも大きな負担をかけます。減速機を直して運転を再開しようとしても、固まった汚泥の重みでレーキが破損したり、ポンプが故障したりするおそれがあるのです。
さらに、通常の方法で汚泥を引き抜けなければ、バキュームカーによる緊急対応も必要です。減速機1台の故障が、複数の機器の修理と緊急対応の費用へと広がってしまいます。
故障の前ぶれをつかむ「予知保全」の考え方も取り入れたい
減速機の故障は、多くの場合、事前に何らかのサインを出しています。そのサインをつかんで手を打つのが「予知保全」という考え方です。
予防保全・予知保全・事後保全の違い
設備の保全には、大きく分けて次のような方法があります。
| 保全の方法 | 考え方 | 減速機での例 |
| 事後保全 | 故障してから修理する | 止まってから修理を手配する |
| 予防保全(時間基準保全・TBM) | 決めた周期で点検・交換する | 潤滑油を決まった周期で交換する |
| 予知保全(状態基準保全・CBM) | 状態の変化を見て、故障の前に手を打つ | 振動や温度の上昇に気づいて、早めに部品を交換する |
予知保全は「予兆保全」とも呼ばれ、広い意味では予防保全のひとつです。周期を決めた点検と、状態の変化に気づく仕組みを組み合わせることで、減速機の突然の停止を防ぎやすいのです。
スイレイでは、予防保全を怠って設備が故障した場合、修理に保全の3〜5倍の費用がかかると考えています。止まってから直す事後保全に頼りきるのは、結果的に大きな出費を招きかねません。
見逃したくない4つのサイン
減速機が出す故障の前ぶれには、主に次の4つがあります。
・異音:「ゴロゴロ」「カラカラ」など、いつもと違う音がする
・振動:本体や取り付け台に、手で触れてわかるほどの揺れがある
・温度:本体がふだんより熱くなっている
・油漏れ:本体の下やつなぎ目に、油のにじみや汚れがある
どれも、毎日の巡回で気づける変化です。「なんとなくいつもと違う」と感じたら、そのままにせず記録に残しておきましょう。
点検チェック表
日常点検と定期点検で確認したい項目を、表にまとめました。
| 点検の種類 | 確認すること | 気になったときの対応 |
| 日常点検 | いつもと違う音がしないか | 録音しておき、メーカーに相談する |
| 振動が大きくなっていないか | 取り付けボルトの緩みも確認する | |
| 本体が熱くなっていないか | 温度を測って記録し、変化を比べる | |
| 油漏れやにじみがないか | 油量を確認し、シールの点検を依頼する | |
| モーターの電流値が上がっていないか | 汚泥の固着など、負荷の増加を疑う 電流値を測定記録する | |
| 定期点検 | 潤滑油の量と汚れ | 決められた周期で油を交換する |
| 本体やボルトの錆・塗装のはがれ | 補修塗装を行い、腐食の広がりを防ぐ |
音や温度、電流値は、数字や録音で残しておくと、あとから比べて変化に気づけます。ふだんの電流値や温度を把握しておけば、異常かどうかの判断にも迷いません。
オーバーホールや更新の時期を計画する
減速機は、使い続けるうちに、内部の部品が確実にすり減っていきます。異常が出てから慌てるのではなく、使用年数や点検の記録をもとに、オーバーホール(分解・点検・部品交換)や更新の時期をあらかじめ計画しておくことが大切です。
計画的に更新すれば、部品の手配や工事の日程を、生産への影響が少ない時期に合わせられます。
水処理設備の予防保全はスイレイにご相談ください
減速機の小さな異変は、設備の構造を熟知した専門家に早めに相談することで、大きな故障になる前に手を打てます。
スイレイは、水処理設備の設計から製作、メンテナンスまでを一貫して手がけるメーカーです。「スイレイシック」をはじめ、自社で設計・製作した設備の構造を熟知した立場から、設備の安定稼働に向けた予防保全をご提案しています。
・減速機の音が以前と違う気がする
・長年オーバーホールをしていない
・更新の時期を相談したい」
といったご相談にも対応し、予防保全に必要なお見積りをご提出いたします。
導入後のメンテナンスまで伴走しますので、気になることがあれば早めにお声がけください。
まとめ
減速機は、モーターの回転をゆっくり力強い動きに変え、汚泥をかき寄せるレーキを動かす、水処理設備の心臓部です。潤滑油の劣化や部品の摩耗、汚泥の固着による過負荷、屋外の雨や湿気などによって、少しずつ傷んでいきます。
減速機が止まれば、汚泥の流出による水質の悪化や生産停止、排泥ポンプの詰まり、レーキやポンプの破損といったトラブルが連鎖しかねません。
異音・振動・温度・油漏れの4つのサインを日々の点検で見逃さず、予知保全と計画的なオーバーホールで、突然の停止を防ぐことが大切です。
減速機の状態や更新の時期にお悩みの際は、ぜひスイレイにご相談ください。