専門知識・解説
2026.05.22

水処理設備のタンク材質をどう選ぶか?SS・SUS・PEそれぞれの特徴と使い分けを解説

水処理設備のタンク材質をどう選ぶか?SS・SUS・PEそれぞれの特徴と使い分けを解説

水処理設備において、タンクは水や薬液を貯留するだけでなく、反応や混合、薬品保管など多くの役割を担う中心的な設備です。そのため、使用する材質の選定が、設備全体の寿命・維持管理のしやすさ・ランニングコストに直結します。

そこで今回は、水処理設備でよく使用される3種類のタンク材質である、SS(一般鋼)・SUS(ステンレス鋼)・PE(ポリエチレン樹脂)について、それぞれの特徴と使い分けのポイントをわかりやすく解説します。

タンク材質の選定が重要な理由

タンクは、水処理設備の中で最も多く使われる構成要素のひとつです。原水槽・反応槽・沈殿槽・薬品槽・貯留槽など、プラント内のあらゆる工程でタンクが登場します。

にもかかわらず、タンクの材質選定は設備設計の中で軽視されやすい項目でもあります。「とりあえず安いSS製にする」「純水設備だからSUSにする」といった経験則だけで決めてしまうと、数年後に腐食・変形・液漏れといったトラブルが発生し、補修や交換に余計なコストがかかることになります。

タンク材質を選ぶ際に考慮すべき主な要素は以下のとおりです。

・液温・使用温度の範囲
・タンクの容量・サイズ・形状
・設置環境:屋内・屋外、湿気・塩害の有無
・初期コストとランニングコストのバランス
・将来的なメンテナンス・交換のしやすさ

これらの条件を整理したうえで、各材質の特性と照らし合わせることが、適切なタンク選定の基本です。

SS製タンクの特徴

SS(Steel Structure、一般構造用圧延鋼材)は、水処理設備で最も広く使われているタンク材質のひとつです。鋼材としての強度が高く、大容量の設備にも対応しやすいことが最大の特徴です。

また、加工性に優れているため、角槽・丸槽いずれの形状でも製作でき、設計の自由度が高いという利点もあります。

SS製タンクのメリット

・強度が高く、大型・大容量タンクに適している
・SUSと比べて材料コストが安く、初期費用を抑えやすい
・角槽・丸槽ともに製作可能で、形状の自由度が高い
・溶接・加工のしやすさから、現場での改造・補修にも対応しやすい

SS製タンクのデメリットと注意点

SS製の最大の弱点は、腐食に弱いという点です。水や薬液に長期間さらされると、表面から錆が進行し、タンクの強度や液質に悪影響を与えることがあります。そのため、内容液の性質によっては、内面への防食対策が必須になります。

代表的な防食対策としては、内面FRPライニング(ガラス繊維強化プラスチックの内貼り)、ゴムライニング、耐薬品性塗装などがあります。これらの対策を施すことで耐食性を大幅に向上させることができますが、ライニングのひび割れや剥離が起きると液漏れのリスクが生じるため、定期的な点検が重要になります。

また、SUSと比べると材料に伸縮性があります。角槽の場合、適切な板厚の選定や外部補強を行わないと、内圧や経年変化によってタンクが膨れてくるケースがあります。設計段階での補強計画が、SS製タンクの長寿命化に欠かせません。

こんな用途に注意:硫酸・塩酸などの強酸、あるいは塩化物を多く含む液体をSS製タンクに直接貯留することは避けるべきです。防食ライニングなしでは急速に腐食が進行します。

SUS製タンクの特徴

SUS(Steel Use Stainless、Stainless Steel)は、鉄にクロム10.5%以上、炭素1.2%以下で鉄以外の合金元素の合計50%を超えない合金鋼で、表面に形成される不動態皮膜が高い耐食性をもたらします。清潔性・衛生性にも優れており、純水設備・薬液設備・食品関連設備などで多く使用されています。

SUS製タンクのメリット

・耐食性が高く、内面塗装やライニングが不要なケースが多い
・清潔性・衛生性が高く、純水や薬液の品質を保ちやすい
・長寿命でメンテナンス頻度を抑えやすく、ランニングコストを低減できる
・外観が美しく、清潔感が求められる設備環境に適している

SUS製タンクのデメリットと注意点

SUS製の最大のデメリットは、初期費用の高さです。SS製と比較すると材料費・加工費ともに高くなるため、コスト面での検討が必要です。

ただし、長期的なメンテナンスコストや設備寿命まで含めたトータルコストで考えると、SUS製の方が有利になるケースも少なくありません。

また、SUSは塩素イオンに対して弱いという特性があります。海水・塩化物を多く含む液体・次亜塩素酸ソーダなどを長期間貯留・接触させる場合、応力腐食割れが発生するリスクがあります。液質の確認と、必要に応じた材質グレードの選定(SUS304とSUS316の選び分けなど)が重要です。

塩素イオンへの注意:SUS304は塩素イオンに比較的弱く、海水環境や次亜塩素酸ソーダとの長期接触では腐食が起きやすいです。このような用途ではSUS316へのグレードアップを検討する必要があります。

PE製タンクの特徴

PE(polyethyleneポリエチレン)は、樹脂製タンクの中で最も広く使われている材質です。金属製では対応が難しい腐食性の高い液体に対して、優れた耐薬品性を発揮します。軽量で加工しやすく、小型〜中型設備での使用に適しています。

PEタンクのメリット

・酸・アルカリ・各種薬品に対する耐薬品性が高い
・軽量で施工・設置がしやすい
・金属製と異なり、錆の発生がない
・材料費・加工費が比較的安く、コストを抑えやすい
・さまざまな大きさや形状のものが一般的に販売されている

PEタンクのデメリットと注意点

PVC製の弱点は、金属製と比べて強度・剛性が低い点です。大容量タンクに使用する場合、タンク自体がたわんだり変形したりするリスクがあります。外部補強を施すことで強度を高めることは可能ですが、大型設備への適用には限界があります。

また、高温環境への対応が難しいという制約もあります。PEは熱に弱く、液温が高い用途や直射日光にさらされる屋外設置では、変形や劣化が進みやすくなります。使用温度の上限を確認したうえで採用を判断する必要があります。

PE製以外のタンク

FRP製(Fiber Reinforced Plastic繊維強化プラスチック)やPVC製(polyvinyl chloride ポリ塩化ビニル)がありますが、PE製と比較すると、市販のものは少なく価格は若干高めです。

3種類の材質、選び方のまとめ

SS・SUS・PEそれぞれの特徴を整理すると、用途に応じた選び方の目安がわかります。

判断基準 強度・大型設備重視 耐食性・長寿命重視 耐薬品性・軽量重視
材質 SS製 SUS製 PE製
特徴 大容量・低コスト。防食ライニングで腐食対策を施す。補強設計が重要 純水・薬液に最適。初期費用は高いが長期コストで有利。塩素系には注意 酸・アルカリに強く錆なし。小〜中型向き。高温・大型用途には不向き

ただし、実際の設備設計では、これらの判断基準だけで決まるわけではありません。液質・液温・設置環境・将来の拡張性など、複数の条件を組み合わせて総合的に判断することが大切です。

また、同一プラント内でも槽ごとに最適な材質が異なるケースがあり、それぞれの用途に応じた使い分けが設備全体の安定運用につながります。

タンクのメンテナンスと維持管理

タンクは一度設置すれば終わりではありません。使用する材質を問わず、定期的な点検と適切なメンテナンスが設備寿命を大きく左右します。

SS製タンクでは、ライニングやコーティングのひび割れ・剥離・発錆の有無を定期的に確認する必要があります。劣化が進む前に補修することで、液漏れや設備トラブルを未然に防げます。

SUS製タンクは基本的にメンテナンス頻度が低い材質ですが、溶接部・継手部の腐食確認や、塩素系薬品を扱う場合の液質管理は欠かせません。

PE製タンクは、亀裂・変形・継手部の劣化を目視点検で確認することが基本になります。特に屋外設置の場合、紫外線劣化の進行に注意が必要です。

スイレイでは、常時約100社の水処理設備の定期点検を請け負っており、タンクをはじめとする設備全体の能力維持と長寿命化をサポートしています。

・タンクの腐食が気になる
・材質の選定について相談したい
・既存設備のメンテナンスを見直したい
といったご相談は、お気軽にスイレイへお声がけください。

水処理設備のメンテナンス・定期点検・改良更新については、スイレイのメンテナンスページをご覧ください。

まとめ

水処理設備で使用されるタンク材質には、SS・SUS・PEそれぞれに明確な特徴と向き不向きがあります。

SS製は強度とコストのバランスに優れる一方、防食対策と補強設計が必要です。SUS製は耐食性と長寿命が魅力ですが、初期費用と塩素系薬品への注意が求められます。PE製は耐薬品性と軽量性に優れますが、強度と耐熱性に制限があります。

用途・液質・設置環境・コストを総合的に検討したうえで最適な材質を選ぶことが、設備の安定運用と長期的なコスト最適化への近道です。

タンク材質の選定やメンテナンスについてお困りのことがあれば、ぜひスイレイへご相談ください。